ミニPC「UM870Slim」を購入して自宅で仮想化環境を構築しました。
仮想化基盤にはProxmox VEを採用し、現在はKubernetes(K8s)の学習用に複数の仮想マシンを用意しています。
この記事ではProxmoxのインストールからネットワーク設定、K8sを見据えた仮想マシン構築までの流れを詳しくご紹介します。
なぜUM870SlimとProxmox VEなのか?

私は情報システム部門に勤務しており普段はvSphere上での仮想マシン運用が中心です。
ただ、最近ではVMware製品以外の選択肢を検討する必要が生じたことからProxmoxなどの仮想化基盤についても本格的に検証する必要が出てきました。
また、Kubernetesについてもこの機会にハンズオン形式で学び直したいと考え、自宅で自由に構築・試行できる環境が必要になりました。
そこで選んだのが手軽に扱えて高性能なUM870Slimとオープンソースで柔軟に構築できるProxmox VEの組み合わせです。
使用したミニPCのスペック
項目 | 内容 |
---|---|
メーカー | Minisforum |
モデル | UM870Slim |
CPU | AMD Ryzen 7 8745H |
メモリ | 32GB |
ストレージ | 500GB SSD |
ネットワーク | 有線LANポート ×1(Wi-Fiは非対応) |
Wi-FiはProxmoxでは使えなかったため有線LANを活用しています。
管理用の接続は安定性の面でも有線がベターだと感じました。
Proxmox VEのインストール手順
インストールメディアの作成
公式サイト(https://www.proxmox.com)からISOイメージをダウンロードし、Rufusを使ってWindows上でUSBメモリに書き込みました。
普段Windowsを使用している方にはこの方法が最も簡単で速いと思います。
BIOS設定の調整
- セキュアブート無効化
- 仮想化支援(AMD-V)の有効化(※Ryzen搭載のため、IntelのVT-xではなくAMD-Vを確認)
- ブート順序の変更(USBを最優先に)
Proxmox VEのインストール
USBから起動し画面に従ってインストール。
特に迷う部分はありませんでしたが、ネットワーク設定はインストール中に同時に実施するため、使用するIPアドレスを事前に決めておく必要があります。
もし設定を誤った場合は、インストール完了後にProxmoxのCLI画面にログインし、/etc/network/interfaces
を直接編集して修正する必要がある点に注意が必要です。
Proxmox環境の初期設定
- Web UIにアクセス(https://[IPアドレス]:8006)
- パスワードの変更、ホスト名の修正
- ストレージのラベル設定(LVMやZFSの選択)
- 仮想マシン用のブリッジネットワーク(vmbr0)の確認
- 有償リポジトリ(Enterprise)を無効化し、無償の
pve-no-subscription
リポジトリを有効化
# Enterpriseリポジトリのコメントアウト
sudo sed -i 's/^deb/#deb/' /etc/apt/sources.list.d/pve-enterprise.list
# no-subscriptionリポジトリの追加(必要に応じて)
echo "deb http://download.proxmox.com/debian/pve bookworm pve-no-subscription" | sudo tee /etc/apt/sources.list.d/pve-no-subscription.list
# パッケージ更新
sudo apt update && sudo apt upgrade -y
- GUIの表示言語を「日本語」に変更(Web UI右上のユーザー設定から言語を選択可能)
日本語にしておくと各設定項目の意味が分かりやすく、初心者にも扱いやすくなります。
構築した自宅クラウド環境の例
名前 | OS | 用途詳細 |
---|---|---|
k8s1 | Ubuntu Server 24.04 | K8sのコントロールプレーンノード |
k8s2 | Ubuntu Server 24.04 | K8sのワーカーノード |
k8s3 | Ubuntu Server 24.04 | K8sのワーカーノード |
ck1 | Ubuntu Desktop 24.04 | 動作確認用のデスクトップ |
ck2 | Ubuntu Desktop 24.04 | 動作確認用のデスクトップ |
vyos | vyos | テスト環境のための仮想ルーター |
k8s4 | Ubuntu Server 24.04 | K8sのワーカーノード |
k8s5 | Ubuntu Server 24.04 | K8sのワーカーノード |
次の画像が実際の管理画面です。

試しに8台ほどのVMを構築しましたがリソースにはまだまだ余裕があることが分かります。
強いて言えばRAMの使用率が高めになっているので、メモリをもっと増強すればさらに多くのVMを稼働させることができそうです。
さらにProxmoxはWeb GUIからの操作が非常に直感的でスナップショットの取得やクローンもボタン一つ。
CLIが好きな方であればSSHでProxmoxホストに接続し、qm
コマンド(Proxmoxの仮想マシン管理用CLI)を使って仮想マシンの作成・起動・停止・スナップショット取得などをスクリプト的に制御することも可能です。
GUIを使わずに自動化したい場合にも便利です。
気づいた注意点と改善点
- Wi-Fiは非推奨:Proxmoxはデフォルトで無線LAN対応していない(ドライバがない)
- ストレージのIO性能は重要:仮想環境を快適に使うにはNVMeが安心
- バックアップを忘れずに:Proxmoxのバックアップ機能は充実しているので定期スケジュールを組むのがおすすめ
今後の展望
- Cephによる分散ストレージの実験
- TraefikやMetalLBによるサービス公開
- セキュリティルールを意識したiptables設計
このようにUM870Slim + Proxmox VEの組み合わせは、自宅ラボ環境で仮想化やKubernetesを学ぶには最適な構成です。
Kubernetesのようなモダンな技術も自宅で気軽に試せるので、これからもラボ環境の充実を目指していきます!